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国連・欧州最新レポート「100%有機農業で世界人口を養う!」


今日、世界の農業は過去にみないほどの集約化、工業化、大規模化をむかえ、環境汚染や健康被害を深刻化させる要因となっています。そんな中、より持続可能な農法として世界で支持を得てきたのが、「有機農業」です。

しかし、食料安全保障の観点からみると、「有機農業はベストな解決策ではない!」と長らく批判されつづけてきましたが、2017年末、有機農業が世界を養うことができるという趣旨のレポートを国連、欧州研究機関が共同で発表し、業界に衝撃をもたらしました。

今回は、本レポートを元に、世界の農業・食料供給を取り巻く現状と有機農業の可能性について追っていきたいと思います。

2050年までに世界の食料事情は恐ろしいほどに深刻化している

ユニセフの保健員による栄養不良の検査を受ける子どもたち(南スーダン)2017年2月25日撮影

UNICEF

2050年までに世界人口が90億人になると推定されています。国連の統計によると現在の世界人口は76億人。約30年後には14億人もの人口が爆発的に増加するという予測です。

これに伴い、まず食料需要が拡大します。国連人口基金(UNFPA)の世界人口白書によると、食料生産がこの人口爆発に追いつかず、地球規模で食料不足が劇的に悪化していくといいます。

ただ単に人口が増加するだけではなく、一部の途上国や新興国では平均所得の値が2倍以上に膨れ上がると予想されており、この所得の増加が食料需要のさらなる拡大をまねき、需要は現在の50%拡大すると推測する研究者もいます。


Pixabay

このような世界的な経済成長のもと、「水、エネルギー、土地」といった資源需要もさらに増えることから、資源の枯渇が同時に進むことが推測されています。これが、さらに食料生産の足かせとなり食料不足を助長していきます。

さらに、年々悪化の一途をたどる気候変動により、自然災害が生じ、収量がますます不安定になっていくとも考えられています。

収量安定化のためには、さらなる土地が必要で、現時点より最大90%農地が拡大しないと食料供給が間に合わないとすら考えられています。

このように複雑な問題が絡み合い、世界の食料供給は悪化の一途をたどっていくと予想されています。

食料安全保障の観点ではなぜ、有機農業では不十分なのか?


Pixabay

このような深刻な食料事情のもとでは、「有機農業では世界を養えない。」このように、30年以上も前から研究者や政治家などの間で有機農業は批判されつづけてきました。

実際に、有機農業はそうではない慣行農業(有機農業ではない農業)と比較すると約8~25%は単収(面積あたりの収穫量)が低いという研究結果があります。そのため、収量だけみた場合、有機農業を推し進めることは食料安全保障の面からはリスクが大きいと考えられています。

また、有機農業で収量をあげようとすると、多くの農地が必要になります。限りある土地を増やしつづけることは不可能です。さらに、石油系合成肥料の使用が制限されると土壌の栄養状態が不十分となり、さらに収量が減るといった主張もあります。

これらが、有機農業批判における最大の論点となり、有機農業では世界は養えないといわれてきた理由でした。

表面的にしか議論されていない有機農業批判。。。

ただし、いずれの有機農業批判も浅い議論で終わっているといわれています。

たとえば、「合成肥料なしでは、有機の土壌栄養状態が不十分となり収量が減る」という主張に対し、その結論が導けるだけの確固たる実験や分析がともなっているレポートは存在しません。

また、有機農業が大きな「システム」としてもたらす環境・資源保護、土地の有効活用、災害に強い環境形成など、食料供給安定化に中長期的に大きく貢献する側面は言及されておらず、包括的に議論がなされているとは考えにくい批判が多いのも事実です。

国連機関、有機農業研究所や欧州大学らが、「世界人口を有機農業で養う」ための戦略を発表

そんな中、2017年スイス有機農業研究所(FiBL)、国際連合食糧農業機関(FAO)、欧州各国の大学の研究者らが、「有機農業でサステイナブルに世界を養う戦略」という共同研究論文を発表しました。

本論文で研究者らは、深刻化する食料事情を組み込んだ分析モデルを用いて、2050年までに有機農業が世界人口90億人を養うことができるかどうかを検証した結果、つぎの3点を変えることができれば可能であるという結論を導き出しています。

1. 肉の消費量を現行の3分の1に抑える
2. 人間の食料となる穀物を家畜の餌としてできるだけ利用しない
3. 食品ロスを減らす
(食品ロスとは、食べられるにもかかわらず、捨てられている食品 )

「有機農業で世界を養う」には、3つの条件を満たす必要がある!

では早速、有機農業で世界人口を養うために満たされねばならない3つの条件を具体的にみていきましょう。

1. 肉の生産量を抑えること


The Guardian

肉を生産するには、野菜や穀物などをつくるよりも多くの土地が必要になり、さらに地球温暖化の要因となる温室効果ガスが大量に生みだされるといわれています。

同じカロリーを生み出すために、肉の場合は土地が最大160倍必要になり、温室効果ガスの排出量は11倍も増えるとされています。

また、肉を生産するためには餌の生産も必要です。肉の生産を抑えることで大量の土地の確保につながり、人間にとっての食料安定につながります。

通常、集約的な慣行農業では化学肥料を大量に投入し、狭い土地で大量の家畜を効率よく育てようとします。そのため、肥料や家畜の糞尿から生じた植物が吸収できなかった余剰窒素は、微生物の作用を受け、土の中で「硝酸性窒素」という、いわゆる毒と化してしまいます。

これが、地下水などに流れ込むことで地域の水質汚染や近隣住民の健康被害の原因となっていると指摘されています。

有機農業では、その化学肥料の使用が制限されています。また、畜産一頭あたりの最小飼育場面積が大きいことから、面積あたりの過剰窒素量が低く抑えることができます。

肉の消費量を低く抑えることで、食料安定だけではなく、環境保護と健康維持にも繋がっていくのです。

2. 家畜の餌としての穀物利用を軽減すること


Pixabay

オーガニックではない慣行畜産物の生産には多くの飼料が必要になります。飼料の多くが人の食料となる穀物なため、人間と動物の間で食料争奪を起こしています。

一方、有機畜産では、飼料穀物の使用は制限されています。

たとえば、草食動物の場合、放牧地での採食を最大に利用し、粗飼料と呼ばれる草を最低でも50%以上利用しなければならないという決まりがあります。(認証団体や国によってはこの最低値はさらに高くなります。)

本来であれば、牛のような草食動物は草を食す生き物です。豚は雑食動物なので穀物だけ食べているわけではありません。
そんな家畜たちに穀物を主な餌として与えるのは、動物の生態にあった飼育方法ではなく、動物にとっては心身共に大きなストレスとなっています。

また、農作物生産には向かない農地が世界には無数に存在しますが、こういった土地が牧草地として使用できるケースがあり、このような田畑に向かない土地が草を生み出すための場として利用できれば資源の有効活用にも繋がります。

動物に穀物が与えられるのは、動物の成長を早め生産性をあげるためです。

これらの穀物を人のために使用することで、食料供給を安定させることができ、さらに動物福祉、資源の有効活用などにも繋がっています。

3. 食品ロスを減らすこと

ロサンゼルス郡では、1日あたり約4,000トンの食料ロスを生みだしている。 (Photo by Sarah Reingewirtz, Pasadena Star-News/SCNG)

Pasadena Star-News

昨年国連は、10年ぶりに飢餓人口が増加に転じたと発表しました。現在、世界の飢餓人口は8億人を超え、2050年までにはここから10~20%増加することが見込まれています。

一方で、日本を含む多くの先進国を中心に世界では飽食が併存しています。国際連合食糧農業機関(FAO)によれば、現在食料の3分の1は廃棄されているといいます。

このロスを減らすこと、またロスとなるものの生産そのものを縮小させることで、その分の土地や資源を有効利用し、安定した食料供給が可能になるといいます。

有機農業を広めるために、「今、私たち消費者に何ができるのか?」


Pixabay

社会、地球、次世代のことを考えたら、有機農業を推進することがベスト。

その有機農業で世界の人口を養っていこうと思うのであれば、私たち自身のライフスタイルや食のあり方を変えていくことが必要です。

まず、日々の食事からお肉の量を減らしてみること。

たとえば、今まで食べてきたお肉の量をちょっと減らしてみるとか、1週間に一度だけはお肉を食べない曜日を設けるとか、お肉の代わりとなる素材を利用するなど、ほんの少し意識するだけで、お肉の摂取量は今日からでも減らせます。

さらに、できるだけ、オーガニックでサステイナブルな素材や食事を選択していくこと。

企業や世界に対して日本のオーガニック・サステイナブル市場が魅力的であると知らしめることが供給拡大に繋がります。オーガニック市場の今後の伸びは、私たち消費者の手の内にあるといっても過言ではないです。

そして、無駄を生み出さないお買い物をすること。

食料を買うときは必要な量だけ買って腐らせないようにしたり、外食するときは食べる分だけ注文する、食料ロスを大量に生み出しているファーストフード店やチェーン店などでは基本食事をしない、といった基本的なことを意識すること。

それだけでもあなたという個人から出る食料ロスを防ぐことができます。

誰かがどうにかしてくれるというのは妄想。

世の中がよりサステイナブルで飢餓と飽食のないフェアな世界になっていくためには、できることからでいい、どんな小さな一歩でもいいから、今私たち一人ひとりが消費やライフスタイルのあり方を見直すことが求められているのです。

出典:
Muller A., Schader C., El-Hage Scialabba N., Hecht J., Isensee A., Erb K.-H., Smith P., Klocke K., Leiber F., Stolze M., Niggli U. (2017): Strategies for feeding the world more sustainably with organic agriculture. Nature Communications 8: 1290.
https://www.nature.com/articles/s41467-017-01410-w

本論文の意訳と掲載を快諾下さったスイス有機農業研究所(FiBL)の研究者Mr. Adrian Muller および Dr. Christian Schaderに心から感謝申し上げます。

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オーガニック専門家 レムケなつこ
ドイツ在住、オーガニック専門家。慶應義塾大学経済学部卒。
20代でボリビアにてJICA青年海外協力隊、メキシコでJICA専門家として途上国の生産支援に関わった経緯からオーガニックに目覚める。
本場ドイツの大学院と食品研究所でオーガニックを研究・開発。
オーガニックが大好きな個人起業家向けに「オーガニックの専門知識」と「ビジネスノウハウ」が同時に学べる売上アップメソッドを伝授している。
オーガニック商品メーカーなどの法人コンサルとして、マーケティング・販売戦略、海外市場開拓、商品開発、海外パートナー発掘を担当。
2018年よりドイツオーガニックツアー企画実施、オーガニックビジネススクール設立など今注目の起業家

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