前回、体質改善と健康を気にする人のための安全な油の選び方では、酸化しにくい植物性油脂の代表として「ココナッツオイル」をご紹介しました。
今回は、ココナッツオイルの特徴・効能と効果的な使い方についてお話していきます。
毎日に取り入れて、日々の美容や健康、体質改善にも役立てることができるココナッツオイル。
その理由と、手軽に取り組めるココナッツオイルの使い方を厳選してご紹介しています。
ココナッツとは?
ココナッツはココヤシの実です。
タイ、スリランカ、インドネシア、そして私の住むオーストラリアなど南太平洋のさまざまな国に生息しています。
その実は青くみずみずしいですが、熟すにつれて茶色く乾燥してきます。
ラグビーボール状のココナッツを割ると、中は空洞でそこに透明の液体が入っています。これがココナッツジュースで、真夏日の水分補給として重宝されています。
ココナッツの殻の内側には白い果肉がぎっしりとついていて、これを削り取って乾燥させたり、水分を加えて濾したココナッツミルクは食用として製品化されています。
ココナッツの花の蜜を煮詰めるとココナッツシュガーがつくれますし、殻を覆っている繊維はブラシやロープ、網やマットに加工されます。
固い殻はそのままボウルとして食器や植木鉢として利用したり、切り出してスプーンやフォークなどに加工され、捨てるところが無いほど素晴らしい植物なのです。
ココナッツオイルの製法

photo by Ikuko Umemura
ココナッツの果肉にはオイルがたっぷりと含まれており、そのオイルだけを抽出したものがココナッツオイルです。
ココナッツオイルは大きく分けて二つの製法があります。
精製ココナッツオイルとバージンココナッツオイル。
精製ココナッツオイルは限られた材料から最大限の油を効率よく抽出するために加熱処理をおこない、化学物質を使って色を綺麗な透明にする処理や、ココナッツ独特の香りを脱臭する処理などが施されています。
市販のココナッツオイルはこのように精製された製品が多く出回っています。
バージンココナツオイルは、化学物質を一切使用せずにつくられたものです。
その中でも熱を加えずにコールドプレス(低温圧搾)し、ミルクを発酵させて水分と油分を分離させる製法(発酵分離法)は酵素や栄養成分を壊すことのない、最高級品です。
ココナッツオイルの特徴とベネフィット(利点)
ココナッツオイルは食すにも、外用的にスキンケアに用いるにも非常に優れています。
その代表的なベネフィットを三つご紹介します。
1. ココナッツオイルは、酸化しない油
安全な油の選び方にあるとおり、ココナッツオイルは植物性油脂の中でほぼ唯一、「酸化しない油」です。
酸化する油を体内に取り入れたとき、身体の中でどんなことが起こるのかが理解できると、酸化しない油(酸化しにくい油)を選ぶべき理由がわかるでしょう。
酸化しやすい油を身体に入れると、フリーラジカル(活性酸素)と結合して、身体の中で酸化してしまうからなのです。
フリーラジカル(活性酸素)とは、呼吸に伴って体内で発生するものなのですが、大気汚染や薬、放射能、紫外線、タバコや食品添加物などによっても発生します。
また、肉体的、あるいは精神的にストレスを受けたときにも増加します。
とても元気のよい酸素なので、積極的に油を酸化させてしまうのです。
酸化した油とは?
では、酸化した油とは、どんな油でしょう。
繁華街を歩いていると、居酒屋など料理店の換気扇から油臭い~臭いを嗅ぐことありませんか?
あれが酸化した油の匂いです。
キッチンのレンジ周りを掃除するとき、茶色くてべったりした油汚れは取れにくいですよね。
絞った布巾で掃除すると、何度も、なんども布巾を洗い直してこすっても汚れは落ちず、疲れてしまいます。
あれが、酸化した油です。
身体の中でも同じようなことが起き、茶色くべっとりと酸化した油を代謝するには、普段より多くのエネルギーが必要になります。
あなたがキッチンのレンジ周りを掃除するときと同じように、身体も普段より多くのエネルギーを消費するのです。
このようにして、酸化しやすい油を摂取することで、私たちの代謝が落ちることに繋がります。
代謝が落ちると、どんな風になるの?
- 疲れやすくなる
油の分解に多くのエネルギーが使われることにより、その分、普段の基礎代謝に使われるエネルギーが減ります。
そのため、身体が疲れやすくなります。 - 冷え性になる
油の分解に多くエネルギーが使われることにより、その分、身体全体を温めるエネルギーが少なくなるため、身体が冷えます。 - 炎症が起きる
魚の大トロや、霜降りのお肉をみてもわかるように、脂質はタンパク質の中に入り込みます。それを分解するには多くの酵素が必要となってきます。ですが、酵素が活性する温度は40度前後。冷え性になった体温では酵素が活躍できません。
そこで、白血球の「マクロファージ」というなんでも食べちゃう細胞が油を分解してゆくのですが、そのときに炎症をまき散らしていくのです。
これが皮膚上に現れると、アトピー性皮膚炎などの腫れや痒みとなるといわれています。
このように、酸化しやすい油が体内に入ると、不快な症状が悪循環となって次々に現れてきます。
ココナッツオイルは、90%以上が飽和脂肪酸という、酸化しない油でできているため、身体の中でこの悪循環が起きません。
2.ココナッツオイルは、すぐに燃焼できる油
ココナッツオイルは摂取すると3―4時間で燃焼してしまいます。
ココナッツオイルは24度以上になると液体。それ以下だと固まり固体になります。
この融点の違いが燃焼時間のちがいにも反映されています。
例えば、魚は冷たい川や海の中で過ごすため、体温がとても低いです。
そのため、魚の脂は冷蔵庫にいれても固体にならぬほど融点が低いです。
魚の油で有名なのはオメガ3。消炎作用のある油です。
冷たい油だからこそ消炎作用が発揮されますが、反面、冷たい油だからこそ、代謝するために多くのエネルギーが必要になります。
先述のとおり、摂取しつづければ代謝が落ちて疲れやすい身体になり、冷え性を起こし、最終的には炎症の原因にもなります。
では、動物性の油(脂)はどうでしょう。
牛や豚、鶏などの動物の平熱は38.5度から42度。人間よりも随分温かいですよね。
そのため、平熱36.5度の人間の身体に入ると冷えて固まってしまいます。
冷えて固まった油を代謝するのも、普段よりも多くのエネルギーが必要になりそうです。
料理するとき、まな板の上では固形の脂。フライパンにのせて火にかけると溶けていきます。
このように、体内でも燃焼するには、強いエネルギーが必要なのです。
このことからもわかるように、ほとんどの場合、エネルギー不足で燃焼されず、身体に蓄積され、脂肪となってしまうのです。
ココナッツオイルの融点は24度
ココナッツオイルは体温36.5度の人間の身体に入ってもまだ液体のままです。
摂取してから3―4時間で代謝、燃焼してしまうので、人間の身体を冷え性にするようないたずらはしません。
このココナッツオイルで得たエネルギーは身体の基礎代謝だけでなく、身体の不調を癒すためのエネルギーにも使うことが可能です。
ココナッツジュースは飲むと速やかに身体に吸収され汗を放散させて気化熱により体を冷やします(適温に調節する作用)が、ココナッツオイルは身体に入っても液体のまま。
燃焼がとても早いため、身体を冷やす間も無く代謝されてしまいます。
上記のような、嫌な症状の悪循環を断ち切ることができるのです。
3. ココナッツオイルには、殺菌作用がある
ココナッツオイルにはラウリン酸と呼ばれる抗菌、抗ウィルス、抗真菌作用のある成分が多く含まれています。
このラウリン酸は母乳にも多く含まれていて、これが生まれたばかりの赤ちゃんの免疫力を高めてくれます。
この作用で腸内環境のバランスを整えてくれたり、外用として使えば皮膚表面の常在菌バランスを整えてくれます。
ココナッツオイルのおすすめの使い方5選
このように素晴らしい作用を持っているココナッツオイルを日常的に役立てるためにおすすめの使い方を5つご紹介します。
酸化しない油のココナッツオイルは、調理用(加熱用)や、スキンケア(アウターケア)に最適です。
肌が乾燥しやすい方は、とくに下記のケア方法を参考にしてみてください。
調理用として

ココナッツカレー photo by Ikuko Umemura
ココナッツオイルをそのまま食すのはおいしくないのであまり、おすすめしません。
炒め物やローストなどの「調理油」として使用します。
- 根菜のロースト
サツマイモやにんじん、玉ねぎなどの根菜をざく切りにして、液状になったココナッツオイルを上からまぶしかけ、海塩を振ります。
よく混ぜ合わせてオイルを野菜に絡ませます。
冷たいオーブンに入れて180度にセットし、野菜に火が通るまで20分から30分。
寒い日の手抜き料理にぴったりです! - ココナッツカレー
ココナッツオイルがたっぷり含まれたココナッツミルクでカレーをつくります。チキンのモモ肉を一口大に切り、ココナッツオイルを引いたお鍋で焦げ目がつく程度に炒めて取り出します。人参や玉ねぎを小さめの乱切りにし、同じ鍋に入れて炒めます。そのうえからココナッツオイルを少量追加して、野菜にオイルが絡まるように炒めると火のとおりがよくなります。
半分ほど炒まったら、取り出します。
同じ鍋に今度はみじん切りにした生姜とニンニクを入れてココナッツオイルで炒めます。こんがりしてきたら、カレースパイスを加えて炒めます。
スパイスの香りがいっぱいに広がったら、野菜とチキンを鍋に戻し、そこにココナッツミルクを加えてください。
ミルクが分離しないよう、弱火で煮こみ、野菜お肉に火がとおったら出来上がりです。市販のカレールゥーが無くても、あっという間に絶品のカレーができますよ!
こんな感じで毎日の調理にココナッツオイルを活躍させてくださいね。
スキンケアとして
また、ココナッツオイルは外用(アウターケア)にもおすすめです。
- お化粧のクレンジングに
顔を一度お水で湿らせた後、ココナッツオイルを手に馴染ませて顔にのせ、優しくクルクルと汚れを溶かしてください。
その後、シャワーで洗い流すだけでクレンジング完了です。 - ボディーソープ&保湿剤として
お風呂に入る前に全身にココナッツオイルを塗ります。 お風呂で柔らかくなった皮膚をへちまなどの天然素材のスポンジで優しくスクラブして汚れを落としてください。
最後にシャワーで流して終了。
この後、保湿クリームやボディオイルを使用しなくても、ぷるぷるの肌になれます。 - 怪我をしたときの手当に
傷口にココナッツオイルを塗るだけ。整菌作用により化膿を予防し、オイルが挫傷した皮膚を保護するので皮膚再生が早く、きれいに治ります。
美容・健康、体質改善にココナッツの使い方ぜひヒントにしてみてくださいね。
一家にひと瓶、ふた瓶、ココナッツオイルを常備して、体質改善にお役立てください。
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